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1 受験勉強の基本

(1)はじめに

 このコーナーの読者には,大学3年生の方が多いことと思う。となると,来年7月の教員採用試験まで,あと半年ほどの期間しか残されていない。受験本番までに十分な猶予がないということだ。
 とはいっても,楽しいサークル活動だってあるし,海外旅行にも行きたいし,アルバイトもやらなきゃならないし……。残されたキャンパスライフを快適に過ごすにあたって,やるべきことはたくさんある。受験本番までの時間はそんなに残されていないけれど,勉強に多くの時間を割くことは難しい……,というのがみなさんの多くの本音ではなかろうか。
 では,限られた時間で,合格を勝ち取るためにはどのような攻略法をとっていけばよいのだろうか?以下では,合格最低点をクリアするための方法を述べていくことにしよう。

(2)一般的な勉強法での対応は難しい

 みなさんは大学や高校の受験にあたって,どのような勉強法を取ってきたのだろうか。どうやら,「基礎知識の習得→問題演習→過去問」という順番で勉強してきたという声が多く聞こえてきそうだ。この順番にもとづいた勉強法が効果的だと論じた受験ハウツー本も書店には数多く並べられている。しかし,このような一般的な勉強法は,限られた時間しか残されていない中で受験勉強をしなければならないみなさんにとって,必ずしも効果的とはいえない。いや,むしろ効果的な受験勉強を進めていく上で,みなさんの足を引っぱってしまう可能性すらあるのだ。

(3)逆転の発想こそが大事

 そこで,「基礎知識の習得→問題演習→過去問」という順番ではなく,「過去問+傾向分析→基礎知識の習得→演習」という順番にもとづいた勉強法を提案したい。以下では,この勉強法がいかに有効かということを,一般的な勉強法と比較しつつ,登山の例えも使いながら説明していくことにしよう。



まず,一般的な勉強法は,どのような山の登り方に例えられるのだろうか。みなさんは今,見知らぬ山のふもとにいると仮定しよう。当然のことながら楽に登れるルートはわからない。この場合,みなさんは頂上を見上げながらふもとを一周し,どこに登山口があるのか,どのルートから登った方が楽かといったことを,考えていくことだろう。





 しかし,こんなことをやっていてはかなりの時間がかかってしまう。楽に登れそうなルートをやっとの思いで見つけたときには,陽もすっかり傾いて夕方近くになってしまっていた,なんてことにもなりかねない。さらに,ルートの途中にどのような障害物があるのかといったことまではふもとからは分からない。実際に登ってみてから初めて気づくこともたくさんあるのだ。
 このような山の登り方は,基礎知識を徹底的に勉強してから問題演習に取りかかることと同じだ。基礎知識をしらみつぶしに勉強していくには,膨大な時間が必要だ。勉強の途中で,「どれくらい勉強すれば自分はカンペキに覚えられるのだろうか?」と不安に駆られることも多々あるだろう。
 また,勉強計画をある程度こなしたところで,「この科目には,どんなに時間をかけても点数が上がる見込みがない」,「やっぱりこの科目だけは勉強するのが苦痛だ」といったことがわかってしまうと,今までの勉強時間がムダになってしまう恐れがある。その結果,基礎知識の勉強は中途半端なままで,かつ,精神的にも不安を抱えながら本番に臨むことになりかねない。

 これに対して,本誌の提案する勉強法はどのような山の登り方に例えられるのだろうか。見知らぬ山のふもとにいること,楽に登れるルートを知っているわけではないことは一般的な勉強法の時と同じである。でも,ここでは山のふもとでルートを探し回ることはせずに,ヘリコプターを使って真上から山を見渡してみることにしよう。ヘリコプターという手段を使って頂上,つまりゴールからルートを探すわけである。そうすると,どういうルートがあるのか一目瞭然である。楽に登れそうなルー



トを見つけるのも容易であろう。ヘリコプターからルートを確認していくので,途中にある障害物も発見しやすくなる。ヘリコプターを借りるのにいくらお金がかかったのかという問題を無視すれば,ふもとからルートを探す方法とヘリコプターからルートを探す方法のどちらを選んだ方が頂上に早く登れるかは明らかだろう。
  このような山の登り方は,志望自治体の過去問をいきなり解いてしまう勉強法と同じである。過去問を解くことで,どのような領域から出題されやすいのか,どういった形式で出題されるのか,難易度はどの程度なのかといった重要な情報を入手することができる。また,楽に点を取れそうな科目・分野や,かなりの勉強を必要とする科目・分野もある程度は把握できるだろう。そうすれば後はしめたもの。必要な科目・分野を重点的に勉強することでムダが省かれ,時間を節約することができる。サークルやアルバイトに時間を割くことだって不可能ではない。

(4)出題傾向の把握と勉強の進め方

 「過去問+傾向分析→基礎知識の習得→演習」という勉強法を薦める理由として,基礎知識を徹底的に勉強して,カンペキな能力を身につけるには時間が限られていることが挙げられる,ということは既に説明してきた。すべての科目をカンペキに覚えようとすると,どうしても勉強時間がかかってしまう。そもそも教員採用試験は「選考」を目的として行われるのだから,極端なことをいうならば,上位合格ではなく,最低ラインをクリアして合格すればよいと考えることもできる。満点を取れるにこしたことはないが,必ずしもその必要性はないということだ。では,どのように勉強を進めていけばよいのだろうか。

まずはいきなり受験する自治体の過去問を解いてみよう。どういうレベルの問題がどのような形式で出題されているかを肌で実感できるはずだ。



過去問を一通り解き終わったら,『教職課程』に掲載されている傾向分析一覧を使って,受験する自治体の出題傾向をざっとおさえておこう。この作業を行っておくことで,どの科目や分野を重点的に勉強すればよいかが,わかる。

この時点でみなさんの頭には,例えば教育法のなかで,どの法律が出題されやすいのか,どのような勉強をした方がよいのか(条文の暗記で十分なのか,条文が適用される具体的場面をも想定した学習が必要なのか,など)といった情報がインプットされるはずだ。



あとは,インプットした情報を土台に,参考書や問題集を使って勉強を開始しよう。

 ただし,気をつけておかなければならないことがある。いくら勉強に必要な情報をインプットしたからといって,全ての科目について,平等に時間をかけてはならないということである。
 もうみなさんはお気づきのことと思うが,各科目・分野の出題比率は自治体によって異なるし,みなさんには得意科目,不得意科目があることと思う。このことを念頭において,どの科目・分野を重点的に勉強していくのか,時間配分を考えた上で,効率的に勉強を進めていこう。
  では次に,来年7月までのスケジュールを説明していくことにする。



2 7月までのスケジュール



[教職教養・一般教養]過去問+傾向分析

 この時期は過去問をひたすら解こう。多くの問題集には数年分の過去問が掲載されている。
 例えば,1年分の教職教養を1日で解き,次の日に同じ年度の一般教養を1日で解いたとする。そうすると,2日で1年分の教職教養と一般教養を解き終わるので,数年分の過去問を解くためには計2週間ほどかかる。
  過去問を一通り解き終えたら,月刊誌『教職課程』の傾向分析一覧を活用して,どのような領域から出題されたのかということを確認しよう。その際に重要なことは,自分にとって出題レベルが易しいのか難しいのかといった,問題の難易度を

領域別にまとめておくことだ。また,空欄補充の問題がよく出題されているのか,それとも記述式を取り入れた問題がよく出題されているのかなどといった,出題形式の特徴をまとめておくことも非常に重要だ。このように,単に受験予定の自治体の出題領域を確認しておくだけではなく,問題の難易度や出題形式の特徴までをも把握してしまうことが,この時期に一番求められる作業なのである。こうした整理をしておくと,自分はいったいどの科目・分野が得意で,どの科目・分野が苦手なのかということが自ずと見えてくるはずだ。そしてそれに伴って,どの科目・分野を重点的に勉強すべきなのか,また,どの科目・分野を切り捨てるべきなのかということも明らかになる。以上のプロセスを通じて出題傾向の把握と自己分析を終えたところで,7月の採用試験までにどの科目・分野を重点的に勉強していくのかという計画を立てる作業に取りかかっておこう。


[論作文]

 近年,いじめ問題,不登校,暴力行為などといった児童生徒の問題行動が深刻化している。これらの事件等を受けて,各都道府県や政令指定都市では,教員採用試験の実施にあたり,即戦力レベルの人材を求める傾向が強くなっている。かつてのように,教員になってから指導法に関する経験をじっくりと積んでいくだけのゆとりはあまりないということなのだろうか。ともあれ,即戦力レベルの人材が求められているということは,論作文の試験にどのような影響を及ぼしているのだろうか。簡単にいうならば,みなさんが教員の立場だったらどう行動し,どう考えるのかが,以前にも増して問われるようになっているということだ。このような状況においては,単に新聞やテレビなどで教育に関する事件の概要をおさえておくという程度の対策では足りないことは明らかだ。事件を知っていることを前提とした上で,みなさんならばどう考え,行動するのかということを常日頃から考えておくことが求められる所以である。以上の理由により,この時期は,さまざまな教育問題に対して,自分ならばどう対応するか,どう考えるかをメモにまとめておくことに時間を充てるようにしよう。なお,論作文の書き方については,大学生であるならば,ゼミを積極的に活用してみるのも一つの手だ。あるいは,通信講座を利用することも考えられる。




[教職教養・一般教養]基礎知識の習得

 立てた計画にしたがって基礎知識を習得していこう。その際,参考書を活用して基礎知識を学習してもよいし,ポイントを書き込んだオリジナルのノートを作成してもよいだろう。
 この時期に気をつけてほしいことは,例えば100ページ分の勉強をするとき,4カ月かけて100ページ分の勉強を終える計画を立ててはならないということだ。
 わかりやすくいうならば,1カ月で100ページ分の勉強を終えてしまい,それを残りの3カ月で少なくとも3回以上はくり返してほしいということだ。人間は覚えた知識の多くを忘れてしまいがちである。そうならないよう,同じ知識を何度もくり返して,覚えておくことが重要となる。繰り返すことによって記憶力が強化され,得点力が飛躍的にアップする。

[論作文]

 作成したメモを利用しながら,大学のゼミや通信講座等で論作文の練習を定期的に行おう。なお,11月に引き続き,さまざまな教育問題に対する自分なりの見解をメモに取るなどしておこう。




[教職教養・一般教養]演習

 月刊誌『教職課程』や問題集を活用して問題演習を行おう。間違えた問題については,自分オリジナルのノートなどに整理をして,次に出題されたときに間違えないようにしておくことが重要だ。
  また,間違えた問題のポイントが自分オリジナルのノートに書かれていなかった場合には,そのポイントを書き込んでおくとよい。

[論作文]

  作成したメモを利用しながら,大学のゼミや通信講座等で論作文の練習を定期的に行おう。なお,さまざまな教育問題に対する自分なりの見解をメモに取ることは継続しておこう。




[教職教養・一般教養]総復習

 今まで勉強してきたものを使って総復習をしよう。この時期は,新たな勉強を始めるよりは,自分がやってきたことを確認しながら自信をつけた方がベターだ。

[論作文]

  作成したメモを利用しながら,大学のゼミや通信講座等で論作文の練習を定期的に行おう。なお,11月の時と同様に,さまざまな教育問題に対する自分なりの見解をメモに取るなどしておこう。

 以上のプロセスを経験することによって合格の道はぐっと近くなる。ぜひ実践してみてほしい。



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